「坊っちゃん劇場」の第7作目となるミュージカル「幕末ガール」が上演されますことを、心からお喜び申し上げます。
本作品は、日本に近代西洋医学を伝えたドイツ人医師シーボルトの娘で、日本人初の女性産科医である楠本イネが主人公となっています。
シーボルトの門下であった宇和島藩の二宮敬作のもとで、医学の基礎を学んだ史実に基づき、閉塞感ただよう幕末の時代、南予地域を舞台に、夢を持って力強く生きるイネの姿がいきいきと描かれていますので、どうか皆様方には、これまでの作品同様、本ミュージカルを御堪能いただきたいと思います。
なお、本県では、平成23年度中に予定されている高速道路の宇和島延伸を機に、平成24年4月から、宇和島圏域で「えひめ南予いやし博2012」を開催いたします。
イネが一時期を過ごした南予地域も、ぜひ訪れていただければ幸いに存じます。
終わりに、本公演の御成功と、「坊っちゃん劇場」のますますの御発展を心からお祈り申し上げます。
<おイネのこと>
幕末というと龍馬とか晋作とか、とかく熱い男たちのドラマが主流で、たまに女性が登場しても、そんな男たちの相手役というのが相場でした。
しかしシーボルトの娘、イネはそんな男たちにも拮抗しうる時代の改革者であり、果てしなき夢追人であり、未来への挑戦者であったと思います。
異端の出生であるが故、孤高の道を目指さねばならなかった悲運の人ではありますが、その宿命を新しい可能性に転化して、エネルギッシュに激動の世を生き抜いた女性・イネが、閉塞する現代に対して、逞しい叱咤と励ましのメッセージを贈るような、明るく痛快なミュージカルにしたいと思います。
PROFILE
横内謙介
劇作家・演出家・扉座主宰 日本劇作家協会副会長
1961年生まれ 東京都出身 高校在学中に演劇と出会い、処女作『山椒魚だぞ!』で演劇コンクール優秀賞を受賞。
'82年、扉座の前身「善人会議」を旗揚げ。以後オリジナル作品を発表し続けている。
活動は劇団だけにとどまらず、トニセン<V6>の舞台や、スーパー歌舞伎等、外部に幅広く作品を提供。また、国民文化祭ふくおかオープニングフェスティバル『人生号』構成・演出、愛・地球博『地球タイヘン大講演会』脚本・演出、NHKBS2『深夜劇場へようこそ』司会、'06年フジテレビ系ドラマ『ダンドリ。』脚本等、演劇以外にも活動の場を広げている。
'92年岸田国士戯曲賞受賞。'99年大谷賞を史上最年少で受賞。
朝7時、菜の花畑の中を忌野清志郎の「夢助」を聴きながらウォーキング。
最高に幸せな時。そしてそれは私の根っコだ。根っコがRock! Rockなオイネ。
オイネは私!?
いえいえ、オイネのように偉大じゃないけれど生き方は似ているかも!
守りに入らず、新しい世界、未来をめざす。いくつになってもアナーキーでいたい。
横内さんの脚本、演出との出会いによって「幕末ガール」のためだけの愛おしい我が子(曲)が生まれた。
その曲達は最高のキャストと最高のスタッフの熱い思いをのせて大海原に出航しました。
「幕末ガール」という船に乗船した乗組員(お客様)は共に後悔のない航海を楽しんでいただけると確信しています。
PROFILE
深沢桂子
作曲家・音楽監督
1987年宮本亜門演出のShowStopperシリーズ第一弾「I Got Merman」で音楽監督・編曲を務めミュージカルデビュー。
以来日本で上演された数々のブロードウェイミュージカルで音楽監督・編曲を務める。
1996年からは各地の劇団や市民ミュージカルの指導や作曲、音楽監督も務める。
2005年には自ら企画、作詞、作曲を手がけたオリジナルミュージカル「VIVA! Forties!」(東京FMホール)が好評得る。
2008まで毎年バージョアップして再演、さらなる好評を得る。
2010年 制作集団『I Do Batter Project』(井戸端会議)を立ち上げ2011年第一弾「ヒロイン 女たちよタフであれ!」を上演。好評を得て2012年 再演予定。
「幕末ガール」美術コンセプト
演出家の「すべての物語が船底で進行していく」の演出コンセプトを基本に木造船の内部を具体的にデザインしています。
幸いにも劇場の両側に脇花道があるために、ここに3層の構造物を設置することにより、全体的に立体的に構成することができ、3階部分を甲板とすることで、舞台上の船底との対比も視覚的に表現することができました。
また場面数が多くすばやい場面転換を目指すためにカーテンレールの多用や通常は照明機材を設置するためのブースに甲板への出入り口を設置して縦横無尽な俳優の出現も可能にしております。
オランダおイネが様々な偏見・圧力、それに対する苦悩や挫折を経験していく状況はあえてこの船底という閉鎖的な空間で上演され、最後にそれらを乗り越えて明日への希望未来への夢を、ラストシーンの開放的な舞台装置・照明にすることによりこの作品の大きなコンセプトを観客とともに共有できると確信しております。
また明日への希望・未来への夢はこの坊っちゃん劇場が地方芸術文化の発信の拠点であり近い将来の日本の芸術文化・演劇文化の発展に共通しているように思えます。
PROFILE
金井勇一郎
1986~88年、メトロポリタン・オペラハウスでジョセフ・クラークに、92年にオーストリアの美術家ハンス・シャバノフに師事し、舞台美術・技術を学ぶ。スーパー歌舞伎、平成中村座、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』、蜷川幸雄演出『NINAGAWA十二夜』、グレゴリー・ドーラン演出『ANJINイングリッシュサムライ』などの美術を手がける。
2007年『我が輩は狸である』(坊っちゃん劇場)、2010年「アトム」(わらび劇場)にも、美術スタッフとして参加。
2004年読売演劇大賞優秀スタッフ賞、06年読売演劇大賞最優秀スタッフ賞、08年伊藤熹朔賞受賞。
この作品が他の公演と何が違うか?
「一年間のロングラン」という事が大きく違う。
日本では、特殊な公演以外一年のロングラン公演は大変難しいし、珍しい。それを6年余継続してきたのは驚異であるし、記録的だ。
公演が成立している裏では劇場スタッフのご苦労は並大抵ではなかったのは明白である。
そんな姿勢と情熱を感じて、今回の「幕末ガール」に参加。照明家として寄せる思いは、「元気」を失っている世の中にとにかく「元気!」を届けたい。
そこからすべてが始まる気がしているから。
作家&演出家も目指す所でもあろうから、音楽も振付も美術も照明も一丸となって向かいたい!!
照明デザインとしては、情熱・高揚・前進・復活・発展という方向を意識してデザインしたい。
先々も地方文化に一石を投じている「坊っちゃん劇場」の発展を願って止まない。